保護猫と暮らすようになったのは大人になってからですが、実は私と猫との暮らしはずっと昔から始まっていました。
私が小さかった頃、母はよく言っていました。
「猫は買うものじゃなくて、縁があって家族になるもの。」
今思うと、それは母の考え方そのものだったのだと思います。
母は昔から猫が大好きでした。
困っている動物を見かけると放っておけない人でもありました。
そして、私が初めて猫と暮らしたきっかけも、そんな母らしい出来事から始まります。
シャケをくわえて逃げた猫
あの日のことは今でも何となく覚えています。
私はまだ保育園の年長さん。
小学校へ上がる前の頃でした。
母が台所で魚を焼いていた時のことです。
ふと外から猫の鳴き声が聞こえました。
声のする方を見ると、隣のピアノの先生の家の塀の上に一匹の猫が座っていました。
こちらをじっと見ています。
私は母に言いました。
「お母さん、猫がこっち見てる。」
母もその猫に気づきました。
そして焼いていたシャケを一匹、その猫に差し出したのです。
猫はシャケをくわえると、一目散に走って逃げていきました。
その姿を見ながら母は笑って言いました。
「食い逃げだね。」
私も一緒になって笑いました。
きっともう戻ってこない。
そう思っていました。
夜、窓の外にいた猫
その日の夜でした。
窓の外に何か気配を感じました。
見ると、一匹の猫のシルエット。
近づいてみると、昼間シャケをくわえて逃げていったあの猫でした。
母と顔を見合わせて思わず笑ってしまいました。
「戻ってきたね。」
そのまま家の中へ入れました。
それが始まりでした。
特別な手続きがあったわけでもありません。
誰かが決めたわけでもありません。
ただ自然に。
本当に自然に。
その猫は我が家の家族になりました。
トラという名前の猫
その猫には「トラ」という名前がつきました。
トラはその後、長い年月を我が家で過ごしました。
そして子猫も生まれました。
気づけば我が家には七匹の猫たち。
毎日がにぎやかな大家族です。
今思えば、あの時塀の上からこちらを見ていた一匹の猫が、私の人生を大きく変えたのかもしれません。
猫の次は犬だった
ちなみに、トラが家に来て間もなく、今度は犬を拾いました。
その犬は「クロ」と名付けられます。
そしてクロもまた、最後の日まで我が家の家族として暮らしました。
こちらもなかなか面白い出会いだったので、その話はまた別の記事で書いてみようと思います。
おわりに
振り返ると、私の人生にはいつも動物たちがいました。
そしてその始まりは、一匹の猫と一切れのシャケ。
あの日、塀の上からこちらを見ていたトラとの出会いが、今の私につながっているような気がしています。
今思えば、あの日の出来事は少し不思議です。
シャケをもらって逃げていった猫が、その日の夜に戻ってくる。
まるで昔話みたいな話ですが、本当にあった出来事です。
そして、その猫を当たり前のように家に迎え入れた母も、今思えば少し不思議な人だったのかもしれません。
困っている動物を見ると放っておけない。
そんな母の背中を見て育ったからこそ、私も自然と動物たちと暮らすようになったのだと思います。
トラとの出会いは、ただ猫を飼い始めた出来事ではありませんでした。
あの時、私の中にあった「動物と共に生きる人生」の扉が開いた瞬間だったように思います。
それから猫がいて、犬がいて、そして今もたくさんの動物たちに囲まれて暮らしています。
母との思い出を振り返ると、まだまだ面白い話がたくさんあります。
トラのこと。
クロのこと。
家族になった動物たちのこと。
少しずつ記録として残していけたらと思っています。



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